基調講演
9/2(月)DAY2
隈 研吾
- 講演タイトル:
- 森の時代 詳細
森の時代
講演日程:2019年9月2日(月) 10:55-11:25 会場:国立京都国際会館メインホール
20世紀、人間は自然の力を過小評価するようになりました。私たちは皆、自然への敬意を失い、自分たちがすべてをコントロールできると誤解したのです。
日本人はかつて、自然との付き合い方を知っていました。自然に立ち向かおうとしても無駄で、勝てる相手ではないということです。自然と共に生きていくには、自然への理解と敬意が不可欠であり、そうした賢明さにより、人々は家をあまり高くつくらないようにしていました。
しかし20世紀を通して、人々は「強い」素材でできた「大きくて強い」建築を作ろうと、コンクリートや鉄を志向するようになります。木や石、土でできた伝統的な建物は、「弱い」、「時代遅れ」なものだと見なされました。コンクリートと鉄に支配された、インターナショナル・スタイルの近代建築は、人間と場所とのつながりを断ち切りました。
私たちは今、「場所」を主役とする脱工業化社会に生きています。「物」の生産と「国家」を枠組みとした工業化の時代は去りました。「小さな場所の力」が見直される時代へと世界は転換し、建築もまた、再び人と場所をつなぐ媒介として変化しているのです。ミュージアムもまた人と場所とのつながりを強めるための、大事な道具になることが求められています。我々がデザインしたV&A Dundeeは、そのような意図のデザインです。
講演では、「コンクリートの時代」から「森の時代」への変化の中で、私がどのように建築をデザインしているか、お話しします。
- 講演日程:
- 2019年9月2日(月) 10:55-11:25
- 会 場:
- 国立京都国際会館メインホール
9/3(火) DAY3
セバスチャン サルガド(Sebastião Salgado)
- 講演タイトル:
- アマゾン熱帯雨林保護 ―ブラジリアン イニシアティブ― 詳細
アマゾン熱帯雨林保護 ―ブラジリアン イニシアティブ―
講演日程:2019年9月3日(火) 9:00-10:00 会場:国立京都国際会館メインホール
アマゾンの森林破壊、牧畜や大豆プランテーションの開墾を目的とする原生林での大規模な野焼き、個人の金採掘者による河川の汚染、違法伐採者による未接触地域への侵入など、アマゾン地域の環境破壊に関する話は、毎日のように耳にされているはずです。これらはすべて事実であるのみならず、現実はさらに深刻です。
世界最大の熱帯雨林アマゾンの破壊は、間違いなく進んでいます。その一方で、ブラジル国内のアマゾン熱帯雨林の81%は未だ手つかずのまま残されており、ブラジルにはこの残された森林を保護する共通の責任があります。その責任をいち早く果たせるよう、アマゾン一帯の保護と持続可能な管理に役立つ画期的な枠組みの整備に、私たちは率先して取り組む必要があります。アマゾン熱帯雨林を古くから守り続けてきた先住民は、これまで同様、この取り組みにおける中心的な役割を果たしてくれるでしょう。
また、森林破壊も紛れもない事実であり、環境破壊は特に国有・私有地で最も深刻ですが、その60%以上は未だ森林に覆われ、手つかずのまま残されています。こうした非接触地域の実態を把握するため、私たちは長期間にわたる撮影旅行を通し、ブラジル国内のアマゾン熱帯雨林と共生する未接触先住民の生活を記録してきました。私が撮影したのは、クイクロ族、カマユラ族、ワウラ族などのアルトシングー地域に居住する先住民部族に加え、ゾエ族、アワ族、ヤノマミ族、アシャニンカ族、ヤワナワ族、スルワラ族、コルボ族などのアマゾン奥地で暮らす民族グループです。
さらに、アマゾン川本流に流れ込む多数の支流が織り成す複雑な迷路や、雨季から乾季への変化に伴う水位の大幅な変化を地上や上空から撮影した写真、未接触地域の森林及びジャングルでの野焼きにより上空数千フィートの高さまで舞い上がる噴煙を上空から撮影した写真など、アマゾン全域をカバーするアーカイブを構築しています。
本撮影に関する書籍の出版及び展示が、アマゾンの熱帯雨林や先住民を保護する必要性をより多くの方々理解していただくことにつながり、さらなる被害を生むことなく天然及び人的資源の活用を可能にする新たな方法が生み出されるきっかけとなることを願っています。
- 講演日程:
- 2019年9月3日(火) 9:00-10:00
- 会 場:
- 国立京都国際会館メインホール
9/4(水) DAY4
蔡 國強
- 講演タイトル:
- 私の美術館春秋―ミュージアムあれこれ考 詳細
私の美術館春秋―ミュージアムあれこれ考
講演日程:2019年9月4日(水)10:30-11:00 会場:国立京都国際会館メインホール
基調講演では、過去数十年にわたって世界中で行った一連のプロジェクトを通じて、私がミュージアムとどのように関わってきたかについてお話ししたいと思います。例えば、現在メルボルンのビクトリア美術館にて開催中の「兵馬俑と蔡国強展(Terracotta Warriors & Cai Guo-Qiang)」のこと、「なんでも美術館(Everything is Museum)」と名付けた一連のプロジェクトとして、建設が困難な地域、福島県いわき市の住民と行ったプロジェクトの経験、また、西洋美術の主要機関といえるモスクワのプーシキン美術館、マドリードのプラド美術館、フィレンツェのウフィツィ美術館、ナポリの国立考古学博物館での個展について、そしてニューヨークのグッゲンハイム美術館で企画した展覧会「Non-brand 非品牌」のことなど、世界各地のミュージアムで行ってきた数々の展覧会の経験を通じて、ミュージアムの役割について巡らした私の考察をお話ししようと思います。
伝統的なミュージアムが、どのように今日の芸術にインスピレーションを与え、そしてキュレーターが「シャーマン」の如くいかにして芸術家と芸術史を結びつけるのか?ミュージアムの建設が世界規模で流行し、現代美術が洗練され、エリート主義になっている時代においてこそ、ミュージアムが外国人客のための文化観光ブランドだけでない、地域社会にとってのミュージアムの役割とは何でしょうか?
- 講演日程:
- 2019年9月4日(水)10:30-11:00
- 会 場:
- 国立京都国際会館メインホール