ICOM、ロシアによるウクライナへの侵攻に関する声明を発表
[2022.2.27]
2022年2月24日、ICOMは、ロシアによるウクライナへの侵攻に関して声明を発表しました。ICOM日本委員会は本声明を全面的に支持するとともに、ウクライナが1日も早く平穏な日常を取り戻すことを祈ります。
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Statement concerning the Russian invasion into Ukraine(February 24, 2022)
[日本語訳]
ロシアによるウクライナへの侵攻に関する声明
2022年2月24日現在、ロシア連邦の軍がウクライナに侵攻している。国際博物館会議(ICOM)は、ウクライナの領土および主権の侵害について、強く非難する。ICOMは、この武力紛争によって博物館専門職員と文化遺産が危機にさらされることを強く懸念しており、両国が「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」(1954年ハーグ条約)およびその第一議定書の締約国として、遺産保護のための国際的な法的義務を順守することを期待する。
この紛争は既に深刻な苦痛を生んでおり、容認できない人命の損失につながる可能性も高い。したがってICOMは、迅速な停戦、両交戦国間の調停、博物館専門職員の安全確保と文化遺産の保護のための協調的取り組みを要請する。紛争下の不安定な状況において、この紛争がウクライナのICOM会員、博物館関係者、文化遺産の安全・安心に与える影響についても、ICOMは深い懸念を表明する。
ICOMは、すべてのICOM会員に対し、まず自らの安全を確保したうえで、ICOM職業倫理規定に基づく遺産の保護・保全・促進という自らの職業上の義務を認識し、博物館およびコレクションを、紛争を含むあらゆるリスクから確実に保護することを要請する。このような危機の際に役立つ、無料でアクセス可能なオンラインツールの一部を以下に紹介しておく。
・UNESCO・ICCROMによる非常時における文化財の救出と保全の手引き
さらに、ICOMは広く市民社会に向けて、地元の博物館との連携を保ち、可能な限り博物館の建物やコレクションを保護する活動を支援することを呼びかける。地域社会における教育・学習・楽しみの拠点として、地域のよりどころである博物館が地域社会に支えられることが何より重要だからである。
紛争の影響を直接受ける地域以外においては、この危機に乗じて脅威を受ける文化遺産から利益を得ようとする不道徳な人物に注意が必要である。ICOMは、すべての関係者に当該地域からの密輸が増加する可能性があることを警告する。同時に、「文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」(1970年ユネスコ条約)、「盗難もしくは不法に輸出された文化財の返還に関する条約」(1995年UNIDROIT条約)、さらに言うまでもないことだが人類共通の文化遺産を保護するための他の国際的な条約に基づき、各国政府に文化財保護に関する国際法上の義務に留意するよう呼びかける。
ICOMは、国際的なパートナーや関係者と緊密に連携し、状況の推移を注視している。ICOMは、ウクライナの遺産が今後直面する可能性のあるあらゆる脅威を和らげるため、可能な限りの支援を提供し続ける所存である。