May 31, 2023
国際博物館の日シンポジウムを 5月21日国立科学博物館にて開催しました
公益財団法人日本博物館協会とICOM日本委員会は、2023年5月21日に国際博物館の日シンポジウムを開催しました。当日は、約100名の方にご来場いただき、盛況のうちに終了しました。
本年のテーマは、「博物館と持続可能性,ウェルビーイング」。持続可能性や包摂性の促進、社会的孤立の解消への取り組みや健康増進など、SDGsが掲げる目標の達成に向け、博物館が有する変革の可能性について議論することを目的に開催されました。
青柳正規 ICOM日本委員会委員長による開会あいさつに続き、栗原祐司 ICOM日本委員会副委員長より、「ウェルビーイング」の概念や、また今年度予定されているICOM-ICMS(博物館セキュリティ国際委員会)東京大会(2023年10月10日〜10月15日)などについて趣旨説明がありました。
その後、本年度のテーマに関連して3名の専門家による講演が行われました。まずは、九州産業大学の緒方泉氏より、<「博物館浴」と高齢者のウェルビーイング>というタイトルで講演がありました。これまで感覚で語られていたアートの効用を、エビデンスを示し科学的に検証していく必要があるとし、森林浴には科学的根拠が示されているように、「博物館浴」の効用を示す実証実験を始めており、リラックス効果があることが示されている。課題はあるものの、地域住民のウェルビーイング向上に役割を果たせるよう、さらに多彩な「博物館浴」の実証実験を進めていきたいと語りました。
続いて、<からだ全体で作品をあじわう─「ダンス・ウェル」の試み>と題して、下倉 久美氏から、東京都美術館で行われているパーキンソン病とともに生きる方々を中心に、多様な方が一緒になって作品や空間をダンスを通して表現する鑑賞方法について講演がありました。
続いて、邱君妮氏(東京文化財研究所)からは、<ミュージアムの力と可能性ー台湾の事例から考える>と題して、台湾における文化平権の概念や、博物館のウェルビーイング活動として国立故宮博物院の国宝体操、子供博物館学など興味深い取り組みが紹介されました。
講演に続いて、今後国際的に活躍する博物館人材を育成する観点から、「これからの博物館を考える」と題してICOM日本委員長と大学院生徒の対談が行われました。
登壇者:
竹下春奈氏(明治大学大学院文学研究科臨床人間学専攻博士後期課程)
田中直子氏(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科博士後期課程)
神道朝子氏(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修士課程)
青柳正規 ICOM日本委員会委員長
モデレーター:東自由里 ICOM日本委員会理事
それぞれの登壇者から、ご自身の研究に関する発表があった後、今回のテーマであるウェルビーイングに関して、博物館に関わる専門家自身がどうウェルビーイングを実現するか、「これからの博物館に求められる役割」の一つに「社会や地域の課題にむきあうこと」など、今後の博物館の在り方を探る議論が展開されました。
最後に、山梨絵美子 日本博物館協会会長より閉会あいさつを行い、今後も博物館が課題に取り組んでいくことの重要性が確認されました。
なお、本シンポジウムは、後日ICOM日本委員会のYouTubeチャネルでアーカイブ配信を予定しています。決まり次第こちらのウェブサイトでお知らせします。
ICOM日本委員会のYouTubeチャンネル
シンポジウム概要・国際博物館の日について
https://icomjapan.org/international-museum-day/