July 23, 2021

ICOM 2021年度総会・諮問会議等報告

[2021.7.23]

例年、ICOM年次総会及び諮問会議等は、6月にパリで開催されるが、昨年に引き続き今年も新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からオンライン会議による開催となった。ICOM日本委員会では、諮問会議及び国内委員長会議は、栗原が代表して参加し、総会における投票は半田事務局長、福野副委員長、井上、小川及び栗原が代表して行った。

5月31日(水) パリ時間 12:00~14:00(日本時間 19:00~21:00)
国内委員長会議準備会合(Preparatory Meeting of the National Committees)

6月16日に予定されていたSeparate Meetings の準備会合として、主に昨年の勧告(Recommendations)のフォローアップ及び各国内委員会からの提案を中心に議論を行ったが、接続が悪くスタートしたのは日本時間19:50で、さらに昨年選出されたスポークスパーソンのMuthoni Thang’ wa氏(ケニア)の通信環境が悪いため、結局Regine Schulz 諮問会議長が進行を行い、フォローアップについての議論はほぼ省略された。参加者は最大67人。

1.Muthoni Thang’ wa スポークスパーソンよりあいさつ

2.Regine Schulz 諮問会議長よりあいさつ

3.2020年勧告のフォローアップ

4.2020年勧告の更新
Peter Keller事務局長、Benjamin Granjon メンバーシップ課長から説明

5.2021年勧告案についての意見交換
ICOM-UAE、フランス、ベルギー、アルゼンチン、コスタリカから提案があった。(詳細は、次ページの国内委員長会議概要に記載)

6.その他 特になし

6月16日(水) パリ時間 12:00~14:00(日本時間 19:00~21:00)
国内委員長会議(Separate Meeting of the National Committees)

参加者は最大128人。

1.Muthoni Thang’ wa スポークスパーソンあいさつ
2.Regine Schulz 諮問会議長あいさつ
3.Alberto Garlandini ICOM会長あいさつ

4.Benjamin Granjon会員課長及び Nicolas Moreau法務担当より、新しいICOM会員フォーム及びGDPR(EU一般データ保護規則)に関するプレゼン
ICOM会員のデータベースについては、EU内の全ての個人のためにデータ保護を強化し統合することを意図している規則であるGDPRに基づき、徹底した個人情報の管理が必要で、使用を最小限にとどめ、安全に管理しなければならない。ICOM本部としては、データ保護担当者を指名し、個人情報を技術的効果的に保護できるセキュリティ体制を確保し、第三者への公開を制限するなどデータ管理を徹底することが求められている旨の説明があった。また、GDPRの規則やICOM規約に基づき、ICOM会員の新たな入会申込書を作成しており、間もなくオンライン入会フォームも更新される。各国内委員会は、IRISデータベースを通じてアクセスが可能になる。

5.Lauran Bonilla-Merchav ICOM Define(博物館定義特別委員会)共同委員長より、Museum定義の見直しに向けた現状報告
ICOMの組織179団体のうち、意見募集に回答があったのは97(54%)。国際委員会は32のうち26、国内委員会は119のうち62、地域連盟は7のうち4、加盟機関は21のうち5との報告があった。6-7月は、各国際・国内委員会等から提案されたキーワード/コンセプトの分析の結果をまとめる(Preparation and Publication of Results of Consultation)ステップ5の段階にあり、7月から9月にかけてこれらの提案を評価する(Evaluation of Key Words and Concept)ステップ6に移行する。来年5月10日前後に、すべての会員に対して開かれた会議を開催し、透明性のあるプロセスにより、プラハ大会で最終的な定義の見直しに関する投票を行う予定であるとのアナウンスがあった。  ICOMベルギー、ルクセンブルグ、ケニア、韓国から、国内委員会の半分しか参加していないという意見や質問があり、ICOM本部の回答によれば、キーワード/コンセプトの意見は、EU圏及びアメリカからの意見が多く、現在の定義で満足と回答したのは1件だけとのことであった。

6.Hugh Maguire NCWG(国内委員会ワーキング・グループ)委員長より、NCWGの報告
会員資格について、国内委員会のアンケート調査を踏まえ、以下の説明があった。いずれも決定事項ではなく、検討中。学生会員については、「Early Career Professionals」として、博物館から推薦状を出してもらってはどうか。退職会員については、老人用パスカードとは違うので、引き続き理事等として博物館に関わっていることの証明が必要。ボランティアについては、アメリカのドーセントのようなボランティアと、実際にボランティアが運営している博物館、コミュニティ・ミュージアムなどと区別する必要がある。 また、博物館とは関係ないところに転職した場合、ICOMが認識する必要がある。団体会員については、大規模館については、何らかの見直しが必要。

7.国内委員会勧告について
5月31日に開催された準備会合をもとに、スポークスマンが10項目の勧告案を提案し、議論が行われた。

1)国内委員間の情報交換を促進するため、各国内委員長が使用するSNS等の情報ツールを確認すること。(ICOM-UAE提案)
原案ではWhat’s Appグループ設立の提案だったが、ICOMスウェーデン、ハイチ、ナミビアからコメントがあり、What’s Appはセキュリティ上の問題があり、まずは有効な情報ツールを確認すべきとされた。

2)ICOMのウェブサイトに、ICOM会員館のリストを掲載すること。(ICOM-UAE提案)
ICOMチェコ及びナミビアからコメントがあり、法的に可能かという疑問や、リンクを貼ればよいとの意見があった。ICOM本部からは、会員館は毎年末に公表しているが、3,000以上の会員館の最新情報をリアルタイムで更新することは困難。団体会員がICOMのロゴマークを掲示することは可能との回答があった。

3)*Solidarity Project(ソリダリティ・プロジェクト)は重要だが、ある地域の国内委員会は、特にデジタル弱者であるがゆえに、この情報に満足にアクセスできない。同プロジェクトをはじめ、彼らが必要な情報を享受できるようにしないと、国内委員会としての地位を占めることができない。(ICOMフランス提案)
ICOMナミビアから、Eメールが最も有効だが、必ずしも最新のアドレスが登録されていないとのコメントがあった。ICOM本部からは、会員チームが会員のEメールアドレスの更新に努めているとの回答があった。

*ソリダリティ・プロジェクトは、国際委員会を中心に複数の委員会等が連携し、コロナ禍に対応した活動に対しICOMが支援するもの。2020年6月の執行役員会で実施が決まり、3万ユーロを上限に最大90%の補助を行っている。収束後を見据えた活動も対象となるが、国内委員会だけでは申請できない。

4) 財政的に不安定で危機的状況にある国の国内委員会は、その適切な解決策についてICOM本部と相談すること。(ICOMアルゼンチン提案)
原案は会費のカテゴリーに対する問題提起で、ICOMイランは同意し、ICOMナミビアは会費支払いが困難な場合はICOM本部と相談すべきとのコメントがあった。ICOM本部からは、個別具体の相談を呼び掛けるとともに、現状のカテゴリーは各国のGDP(国内総生産)に基づくもので、インフレ等の国内危機についても考慮しているとの回答があった。

5) ICOMの公用語に、国連公用語であるアラビア語などを追加することの可否について、コストや人材を含め調査すること。(ICOMベルギー提案、ICOMフランス支持)
原案はICOMの参加者を増やすために、翻訳するICOM公用語を増やすことを求めるもの。ICOMフランスは、翻訳にはコストがかかるが、ICOMの予算はすべての加盟国が共有すべきものとコメントし、ICOMポルトガル及びベルギーが賛同。また、ICOMイラン及びナミビアが支持。

6)NCWG(国内委員会ワーキング・グループ)は、回答がない国内委員会に対し、その理由を問い合わせるべき。(ICOMベルギー提案)
ICOMケニアから、最近ICOM本部等からの調査や照会が多く、国内委員長として十分な対応ができないとのコメントがあり、ICOMナミビアが賛同。

7)国内委員会は、ワーキング・グループや特別委員会による審査プロセスに関わることにより、これらが最終的な結論をまとめてICOMの政策に反映される前に、国内委員会が干渉、貢献、交流できる機会を創出すべき。(ICOMフランス提案)
ICOMオランダから、これまでも特別委員会やワーキング・グループの検討手続きには多くの疑問があり、正直どうしていいかわからないという意見や、ICOMイランから、LEACやETHCOM等の特別委員会の結論が承認される前に、情報を提供してほしいとのコメントがあった。

8)各国内委員会は、ICOMが毎年12月に予算案を作成する前にその内容を審査するべき。(ICOMフランス提案)
ICOMフランスは、ICOMの予算編成・執行に対し、もっと国内委員会が関与すべきと主張し、各国内委員会から多くの賛同が寄せられた。

9)国内委員会は、時差の負担を軽減するため、ICOM規約に基づく会議の複数回の開催につい提案する。(ICOMコスタリカ提案)
原案では、オンライン会議の開催時間を日によって変更することを提案した。ヴァーチャル会議では、地域によっては深夜の開催となり、例えばコスタリカでは午前3~5時の時間帯となる。

10) ICOMは、ICOM以外の同様の組織を参考に、ジェンダー及び多様性の政策を確立する。その政策は、これらに関する不満や非難に対応する手続きを含むものとする。(ICOMコスタリカ提案)

各国内委員会から、以上の勧告案の実行手順について質問・意見があり、ICOM本部からは、昨年の国内委員長会議のすべての勧告に回答しており、今回も同様にこれから対応策について検討したいとの発言があった。

8.その他 特になし

6月17日(木) パリ時間 12:00~14:00(日本時間 19:00~21:00)
第 89 回諮問会議(Advisory Council Meeting 89th Session)

参加者は最大171人。

0.開会
0.1 Alberto Garlandini ICOM 会長からの開会あいさつ
0.2 Regine Schulz 諮問会議長からの開会あいさつ
0.3 議事確認

1.第88回諮問会議(2021年1月21日)の議事録の承認、投票の確認

2.特別委員会及びワーキング・グループの報告
2.1 ICOM Define(博物館定義特別委員会)のLauran Bonilla-Merchav 及びBruno Brulon共同委員長より、Museum定義の見直しに向けた現状報告(国内委員長会議報告5.を参照)

2.2 ETHCOM(倫理特別委員会)のSally Yerkovich委員長より、今年1月から5月末まで意見募集を行ったが、35件の提出にとどまった。そのうち24件は倫理規程を改正又は更新すべき、8件はその必要はないという意見で、3件は博物館定義の見直し後または新型コロナウイルスの感染が収束するまで延期すべき、というものであった。改正又は更新すべきという意見は、具体的には、持続可能性、環境問題、社会・財政問題、博物館の独立性、ジェンダー平等、 公正雇用慣行、デコロナイゼーション、デジタル化、複製問題等に関するもの。ETHCOMとしては、改正が必要かどうか現在検討中であり、7月の執行役員会で報告予定。

2.3 SAREC(戦略的配分評価委員会)のEmma Nardi委員長より、ソリダリティ・プロジェクト(Solidarity Project)の進捗状況について報告があった。昨年の第1回募集には、17件の申請のうち8件が採択された。第2回は今年の3-4月に募集し、SARECは6月に審査を行い、9件が採択された。現在レターを執筆中で、近日中にウェブサイト上に公開予定。また、2020年10月から、毎年ICOM年次プロジェクト(ICOM yearly projects)の募集も行っており(合計6万ユーロの事業規模)、今年1月が締め切りで、13件の申請のうち7件が採択された。

2.4 WGS(持続可能性特別委員会)のMorien Rees委員長より、昨年12月以降の検討状況 について報告があった。ICOMイタリア、ポルトガル、チェコと連携し、デジタル技術を活用した教育活動プロジェクトが、ソリダリティ・プロジェクトに採択された。昨年10月末に上海で博物館の持続可能性に関する国際シンポジウムが開催され、12月には上海大学とICOMによってICOM-IMREC(International Museum Research and Exchange Centre)が設立された。また、4月21日にウェビナー「Earth Day:Cultural Heritage and Sustainability」を開催した。

2.5 ICWG(国際委員会の未来ワーキング・グループ(持続可能性特別委員会)のGabriele Pieke委員長より、昨年12月以降の検討状況について報告があった。4月15日にウェビナー「Strategic Planning for ICs」を開催した。 事前の調査では、戦略計画を持っている国際委員会は、CIMCIM、ICEE、ICOM-CC、MPR、UMACのみで、さらなる充実が必要。ウェビナーにフランス語及びスペイン語の通訳が入っているのは極めて有効であり、ICOM本部は引き続き、同時通訳に対する支援を行い、各地域からの参加者の増加に努めるべき、等の提案があった。

2.6 FIREC(財務・資産委員会)について、Carina Jaatinen執行役員より、報告があった。昨年10月の会合では、2021年予算当初においてはコロナ禍によって会費収入が25%減となり、50万ユーロ以下の赤字となることが予測されたが、今年2月の会合では、特別委員会やワーキング・グループ、執行役員会の開催等の予期しない支出増によって、赤字は56万8千ユーロとなり、さらに厳しい状況になっている。

2.7 SPC(戦略的計画委員会)について、Carol Scott執行役員より報告があった。次期戦略的計画(Strategic Plan 2022-28)については、今年7-8月に2回目のアンケートを実施し、ICOMプラハ大会で承認を得る予定。

2.8 外部評価運営委員会(External Review Steering Committee)の設置について、Eric Dorfman執行役員より説明があった。昨年のICOM会長等の辞任後の混乱を踏まえ、ICOM本部では、直ちに内部評価及び内部監査の報告書をまとめ、昨年7月に公表した。一方、外部評価の必要性も昨年7月の国際・国内委員長会議の勧告等で指摘されていることから、諮問会議としては、外部評価運営委員会を設置し、今年7月から調査を開始、次回の諮問会議が開催される11月までに最終報告をまとめたいとのことであった。
これに対し、参加者からは、ICOM自ら行う評価は外部評価ではなく、第三者が行う必要があり、アクセスをクリアーにする必要があるとの意見や質問が多く出された。これに対してICOM本部は、最終的には外部に依頼するとしながらも、改めて7月22日に外部評価に関する会議(External Review Meeting)を開催し、意見交換を行うことになった。

3.Separate Meetings 勧告

3.1 Muthoni Thang’ wa 国内委員長会議スポークスパーソンより勧告の報告があった。

  1. 本部は、各国内委員長が使用するSNS等の情報ツールを確認すること。
  2. 本部は、ICOMのウェブサイトに、ICOM会員館のリストを掲載すること。
  3. Solidarity Project(ソリダリティ・プロジェクト)は、地域によっては、特にデジタル弱者であるがゆえに、この情報に満足にアクセスできない。同プロジェクトをはじめ、彼らが必要な情報を享受できるようにしないと、国内委員会としての地位を占めることができない。
  4. 財政的に不安定で危機的状況にある国の国内委員会は、その適切な解決策についてICOM本部と相談すること。
  5. 本部は、ICOMの公用語にアラビア語などを追加することの可否について、コストや人材を含め調査すること。
  6. NCWG(国内委員会ワーキング・グループ)は、回答がない国内委員会に対し、その理由を問い合わせるべき。
  7. 執行役員は、原則としてワーキング・グループや特別委員会による国内委員会の審査プロセスに関わることにより、これらが最終的な結論をまとめてICOMの政策に反映される前に、国内委員会が干渉、貢献、交流できる機会を創出すること。
  8. ICOMは、毎年12月に予算計画を作成する前に各国内委員会に意見を求めること。
  9. 本部は、時差の負担を軽減するため、ICOM規約に基づく会議の複数回の開催について検討すること。
  10. ICOMは、ICOM以外の同様の組織を参考に、ジェンダー及び多様性の政策を確立すること。その政策は、これらに関する不満や非難に対応する手続きを含むものとする。
  11. ICOMは、国内委員長会議の勧告の実行手続きを確立すること。

3.2 Kristiane Strætkvern国際委員会会議スポークスパーソンより勧告の報告があった。

  1. ICWG及びNCWGは、IRISデータベースに関する共同タスクフォースを立ち上げ、IRISの機能及びアクセス、データベースの有効利用について検討すること。
  2. 国内委員会は、ICOMの協力を得て、国際委員会への加入を促進すること。
  3. 委員会間、特に財政的な通商停止国との資金の移動について改善策を検討すること。これにより、第3、第4カテゴリーの国が会議を開催するインセンティブとなる。
  4. ICOMは、ICOM大会の登録のような国際委員会のウェブサイトにもリンクできる一般的なデジタル手法を開発すること。これにより、デジタル選挙及び投票を行うことも可能になる。
  5. 国際委員会の事務(office work)を単純化するため、必要な手順をまとめたマニュアルを作成すること。
  6. ICOMは、選挙及び投票に関する一般的な枠組みやガイドラインを作成すること。
  7. ボードメンバーの任期をまたがり、財政的その他の事情が関与する外部プロジェクトに参加する際の国際委員会の明確な規約を整備するべき。すべての関係者が関与する記録書類は、会計監査を受け、ICOM本部に送付される。
  8. 各国際委員会のウェブサイトは、安定的かつ円滑で更新が容易であるべき。
  9. 執行役員及びICOM本部は、補正予算の方法を検討するとともに、年間予算や主要支出に関する透明性と議論の新たな手順について考慮すべき。
  10. ICOMの規則の改正については、会員制度が十分に審議されるまで、投票又は施行されるべきではない。執行役員は、会員制度のコンサルティング手続きについて、最低6週間は各委員会と議論する時間を設けるべき。

3.3 Regine Schulz諮問会議長より、時間の関係で、質問の回答についてはICOMウェブサイトの会員ページから議事録を確認されたい、との説明があった。

4.ICOM本部報告

4.1 Peter Keller事務局長より、ICOM本部事務局の報告があった。フランスでは昨年12月に2回目のロックダウンが終わったが、政府は引き続きリモートワークを推奨したため、ICOM本部では週に4-5日は自宅勤務とし、3月に3回目のロックダウンとなった際も特に健康面とセキュリティに留意した。その間全ての会議は若干の例外を除きオンラインで行ったが、新規職員と会えないという問題はあった。ICOM本部は、現在29人体制で、数人が交代し、10言語、7母語となり、多様性が増している。2021年初頭に新しいオフィスに転居し、保険で若干の補修を行った。

今後3年間、ICOMは21世紀の文化遺産に関して国際的な博物館コミュニティのリーダーシップを強化する。そのため、グローバルな博物館コミュニティを代表し、ダイナミックで将来指向の協会としての地位を取り戻す。また、博物館コミュニティの専門的能力を発揮し、世界の文化・自然遺産を保護するとともに、博物館の持続的将来と社会における博物館の価値に関する議論を活発化させる。さらに会員制度を、より多様性があり、世代を超えたグローバルなものに発展させる。

4.2 Benjamin Granjon メンバーシップ課長より、2020年会員の現況に関する報告があった。
 ICOM会員数 49,547(+1.3%)
 会費収入 4,074,442ユーロ(+1.8%)
 118国内委員会
 個人会員46,474(+1.3%)、団体会員3,073(+0.7%)
 国際委員会登録会員数22,893(+0.4%)
 アジア太平洋地域会員 -14.6%、うちICOM日本会員+7.8%

4.3 Sophie Delepierre遺産保護課長より、遺産保護レポート2020/2021について報告があった。コロナ禍において、*ALIPH(International Alliance for the Protection of Heritage in Conflict Zones) の支援により、西・中央アフリカの5プロジェクト(14博物館)を支援した。また、2020年8月のベイルート爆発後のレバノンの博物館を支援した。ICOMウェブサイトに、*Object-ID の新たなページを開設し、*International Observatory を更新した。Red Listsプログラムには、南東ヨーロッパリストの作成に10国内委員会が関与し、作業中。

*ALIPHは、ユネスコが主管する紛争地における文化財保護のためのグローバル基金。フランスとUAEが先導して2016年12月にアブダビで開かれた「紛争地における文化遺産保護のための国際会議」で提案され、2017年3月にスイス・ジュネーブで設立。

*OBject-IDとは、ユネスコが推奨している文化財を記述するための国際的な標準規格。盗難に遭った芸術品や違法な取引をされた文化財を個々に識別するために役立つもので、FBI やスコットランドヤード、INTERPOL(国際刑事警察機構)等の国際的な法執行組織をはじめ,博物館関係者や文化財に関わる専門家、保険会社等によって幅広く奨励されている。

*International Observatoryとは、文化財の違法取引に関するデータバンク。「文化財の不法な輸出、輸入及び所有権譲渡の禁止及び防止に関する条約」(1970年採択)に基づき、ICOMが2013年に発足させた。

4.4 Aedin Mac Devitt 出版・記録課長より、出版・記録レポート2020/2021について報告があった。ICOMのアーカイブに関するデジタル・プラットホームを開発中で、2022年運用開始予定。2020年の「Museum International」は、ジェンダーとLGBTQI+の特集を組んだ。出版物として、「New Dictionary of Museology」、「Museum Management」、「Museums and Communities in the 21st Century」を2022年に刊行予定。昨年開始したICOM Voicesは、月2回記事を3言語で更新中。

4.5 Alexandra Fernandez コミュニケーション・交流課長より、コミュニケーションレポート2020/2021について報告があった。2021年1月現在、ソーシャルメディアユーザーは89,100で、昨年比+21,700(32%増)。今年中には10万を超える見込み。年次報告(Annual Report)2020は、デジタルフォーマットで公表。昨年から毎月会員にEメールでNewsletterを送付している。ウェブサイト上で基本的な情報を伝えるビデオシリーズを開始し、2021年4月にICOM会員の利点について公開した。

4.6 Carlos Serrano Vasquezキャパシティビルディングプログラム・コーディネーターより、キャパシティビルディングレポート2020/2021について報告があった。ICOMのオンライン研修プログラムMOOC(Massive Open Online Course)を、イギリスの大学が開発しているオンライン講習をベースに連携し、南アフリカ、カナダ/エルサルバドルの講師と協力して作成中であり、2021年末には完成予定。昨年10-11月にフランス政府からの支援を得て、4回ウェビナーを3か国語の同時通訳付きで開催した。昨年12月に上海大学と連携し、ICOM-IMREC(International Museum Research and Exchange Centre)を設立した。ICOM-ICTは、2020年4月以降延期を繰り返しているが、先月異なる相手と契約を交わし、新たな体制をスタートさせる見込み。

5.ICOM大会について

5.1 第26回ICOM大会(2022年)について、ICOMチェコのMartina Lehmannovaディレクターより報告があった。来年8月20~27日に開催予定のICOMプラハ大会は、“The Power of Museums”をメインテーマとし、博物館と市民社会、持続可能性、レジリエンス(強靭性)、人権、技術開発等を視野に入れ、博物館のリーダーシップについて議論することを使命とする。
現段階のスケジュール案では、8月20~21日は執行役員会や諮問会議を開催し、22~24日に総会及び各国際委員会等の年次会合をプラハ会議場(Prague Congress Centre)で開催、25日にオフサイト・ミーティング、26日にエクスカーションの予定となっている。基本的にハイブリッド形式での開催で、どこまでオンサイトで参加できるかは、新型コロナウイルスの感染状況次第。

今年の8月25~27日、プラハ国立博物館でプレ会議(国際シンポジウム)及び会場視察を行う予定。ハイブッド形式での開催を予定しており、詳細は後日公表。

5.2 第27回ICOM大会の開催地の決定は、7月以降ICOM本部による現地視察を経て、11月に改めて開催する諮問会議で選挙を行い、12月の執行役員会(Executive Board Meeting)で決定する予定。

現在開催を立候補している都市は、ドバイ(アラブ首長国連邦)、カザン(ロシア)、ストックホルム(スウェーデン)の三都市。各都市が掲げている時期とテーマは、以下のとおり。
・ドバイ “The Future of Museums in Rapidly Changing Communities”(11月10-13日)
・カザン “Bringing collective knowledge to each”(6月18-21日)
・ストックホルム “The museum sector we need for the world we want. Ways to Agenda 2030 and beyond”(8月26-29日)

6.投票締め切り

7.投票結果
有効投票数 123(84.24%)
第88回諮問会議の議事録の承認 Yes 111(90.24%)、No 5(4.07%)、Abst. 7(5.69%)

8.その他 特になし

6月18日(金) パリ時間 12:00~13:00(日本時間 19:00~20:00)
臨時総会(Extraordinary General Assembly)

0.開会
0.1 Alberto Garlandini ICOM 会長からの開会あいさつ
0.2 Alberto Garlandini ICOM会長から議事説明
0.3 Morgane Fpuquet-Lapar法務担当から投票手続きの説明

1.ICOM規約改正案の説明
Alberto Garlandini ICOM会長及びPeter Keller事務局長より説明があった。今回の改正は、新たに第25条(Article25. Use of telecommunication to hold meetings of ICOM bodies)を追加し、ICOMの会議においてテレコミュニケーション手段を用いることを明文化するもの。ICOM本部はフランスにあるため、その運営に関してはフランス政府の法令に従う必要があり、*フランスの法令で今年の7月31日までは規約等を改正しなくてもオンラインの会議での議決を有効とするものとされていることから、今回改正案を提出し、今後オンライン参加者を促進させることを目標としている。

会員からは、デジタル投票でアクセスできない会員がいる、一度投票したら変更することはできないのか、アテンダンス・シートは必要なのか、検討する時間が足りない、事前投票は疑問、などの意見などが出された。ICOM本部からは、今回の改正は一時的なもので、次回総会で修正は可能であり、いずれにせよすべての会員が意見を言うことは難しいとの発言があった。

*2020年3月25日にOrdonnance n°2020-321が出され、2021年3月9日Décret n°2121-255によって延長された。Ordonnance (オルドナンス)は法律と同じ効力を有する行政命令で、Décret(デクレ)はその下位にある行政立法。

2.投票結果
本議案は、登録有権者660、有効投票数437のうち、賛成394票(90.16%)、反対38票(8.7%)、棄権5票(1.14%)で可決された。

6月18日(金) パリ時間 13:00~14:30(日本時間 20:00~21:30)
第36回総会(General Assembly 36th Session)

0.開会
0.1  Alberto Garlandini ICOM会長からの開会あいさつ
0.2 Alberto Garlandini ICOM会長から議事確認
0.3  Morgane Fpuquet-Lapar法務担当から投票手続きの説明

1.第35回総会(2020年7月24日)の議事録の確認(投票)

2.2020年ICOM会長レポート(投票)
新型コロナウィルスの影響により、2回目のオンライン総会となり、世界中の博物館が閉館また は厳しい制約の下で活動しているが、各館の積極的なアプローチが見られ、新しい日常に対応したオンライン活動も増加傾向にある。ICOM本部でも、オンライン会議やマルチメディア形式の報告書の発行などに努めており、国際博物館の日のイベントも多様な広がりをみせている。引き続きユネスコやEU等とも連携し、予算の獲得を図っていく必要がある。オンライン活動においても、持続可能性やローカル・コミュニティとのデジタル戦略を考えていく必要がある。

3.2020年決算報告
3.1 Carina Jaatinen財務担当執行役員より説明があった。
新型コロナウィルスの影響により、2021年の予算は、会費収入が25%減、基金17%減となり、2021年末の収入は351万ユーロ(前年比-119万ユーロ)と推定され、ユーロの値下がりもあって、助成金を獲得しないと厳しい。
3.2 2020年財務諸表におけるマネージメント・レポート
ICOM本部の移転に際しては、6月の予定がコロナ禍で12月になり、罰金が生じた。従来の2つのオフィスが一つになったことと、インターネットの接続環境が良好になったことで、職場環境は改善した。これ以上収入が減少すると、今後の活動を見直す必要がある。

(休憩)

4.投票結果
有効投票数     486(73.63%)

  • 第35回総会の議事録の承認 Yes 455(93.62%)、No 14(2.88%)、Abst. 17(3.50%)
  • 臨時総会の議事録の承認 Yes 381(72.57%)、No 89(16.95%)、Abst. 55(10.48%)
  • 2020年 ICOM会長レポート承認  Yes 449(92.39%)、No 19(3.91%)、Abst. 18(3.70%)
  • 2020年財務諸表及び履行の承認  Yes 426(87.65%)、No 33(6.79%)、Abst. 27(5.56%)

5.2021年予算
Carina Jaatinen 財務担当執行役員より説明があった。

6.ICOMの今後
次回は、11月18・19日頃に諮問会議を開催し、第17回ICOM大会の開催地の投票等を行う。執行役員会は、7月24日に開催予定。

7.その他 特になし

(以上)
文責:栗原祐司 ICOM日本委員会副委員長

[PDF]  ICOM2021年度総会・諮問会議等報告(概要)