March 30, 2020
「未来に向けて」ICOM会長よりご挨拶
[この文章は、ICOM京都大会2019報告書より、30の国際委員会がICOM京都大会2019期間中に行った活動報告を抜粋しています]
ICOMは1946年の創立以来、博物館の専門家が一丸となって一つの目標に向かって邁進してきました。その目標とは、より良い社会に向けて博物館を発展させることにあります。3年に1度開催されるICOM大会は、この目標の実現に向けて常に中心的な役割を果たしてきました。本大会は、 ICOMにとって最大のイベントであるだけではなく、世界各国の博物館や文化財の専門家にとっても重要なイベントです。
新たな10年の幕開けとなる2020年をまもなく迎えようとする今、ICOMは目標達成に欠かせないより大きな問題に直面しています。それは、気候変動が緊急事態に陥り、地球上の生命にとって史上最大の脅威となっていることです。進むべき未来なくして、一体どのようにして世界の文化財を後世のために守れるというのでしょうか? そのため、本大会は、文化財分野の課題を討議する一大イベントとして、それだけに留まらないさらなる高みを目指しました。2019年のICOM京都大会は、これまでの活動を振り返ると同時にターニングポイントにもなり、持続可能な開発のための2030アジェンダを達成するためにICOMのコミットメントを明確にする機会となりました。
京都大会は、120の国と地域から過去最大の4,590人が参加し、持続可能な開発を目指して様々な課題に取り組みました。例えば、デコロナイゼーションと返還の問題、文化の多様性、災害リスクの管理、地域発展などについて会議が行われました。会場外でも、SNSのライブ動画配信により、96の国からたくさんの人々が大会に参加しました。
大会期間中の1週間で新たな発想を喚起するディベート、プレナリー・セッション、ワークショップそして各ICOM委員会による231もの会議が行われました。その結果、私たちは多くを学び、段階ごとに実施すべき多くの変革について確認することができました。その中には、環境に配慮したICOMの活動や博物館において明確でオープンなディスカッションの奨励を継続することなどが含まれています。
ICOMは、博物館の定義だけでなく博物館の存在意義における議論を牽引していることに誇りを持っています。持続可能な発展にとっての意味、デコロナイゼーションにおける役割、社会の豊かさに与える影響など議論しています。こうした議論は、ICOM委員会と会員の皆さんのお力添えとたゆまぬ努力なしには成り立ちません。心から感謝申し上げます。
私たちの活動は博物館の中だけに留まるものではありません。路上での抗議や各国議会での討論、SNSでトレンドとなっている話題など、世界のあらゆる事柄は、博物館の壁を越え私たちに伝わってきます。私たちの対応や取り組み方次第で、社会における私たちの役割のみならず、社会が私たちに寄せる信頼もまた、決定されるのです。
ICOM京都大会が与えた前例のない影響力は、ICOMがこの1週間で取り組んだ課題に人々が関心を示している証しだと信じています。彼らは本大会で議論された課題が自らに関わると考え、何よりも、博物館が課題解決の一助となることを信じてくださっているのです。この思いこそが、ICOMを、世界各国から博物館の専門家が一堂に会して、イノベーションを生み出し、ベストプラクティスや専門知識を共有し、社会正義や地球環境を守る活動を推し進め、様々な文化や国家の架け橋となり、ひいては平和な世界を実現していくという目指すべき姿であらしめているのです。
ICOM会長
スアイ・アクソイ
Suay AKSOY