April 1, 2020
COMCOL(コレクション活動に関する国際委員会)at ICOM Kyoto 2019
[この文章は、ICOM京都大会2019報告書より、30の国際委員会がICOM京都大会2019期間中に行った活動報告を抜粋しています]
[京都大会での委員会テーマ]
Museums as Hubs of Contemporary Collecting: The Future of Collecting and its Traditions
コンテンポラリーコレクティングをつなぐミュージアム -コレクティングの伝統を未来へ-
報告者: 堀内しきぶ(奈良国立博物館)
[開催日程]
8.29-31 @奈良:プレカンファレンス
9.2 @国立京都国際会館:研究発表
9.3 @稲盛記念会館:CIPEGと合同セッション―研究発
9.4 @国立京都国際会館:CIDOCと合同セッション―研究発表、COMOL総会
9.5 @MIHO MUSEUM、京都国立近代美術館:オフサイトミーティング―博物館及び周辺地域のガイドツアー
[京都大会概要及び所見]
1) 内容
今回の会合は、8月29~31日に奈良で行われたプレカンファレンスの参加者が約20名、9月5日に滋賀と京都で行われたオフサイトミーティングは参加者が約27名であった。9月2日には元COMCOL委員長であるLeontine Meijer-van Mensch氏(Ethnographic collections of Staatlichen Kunstsammlungen Dresden代表)からの基調講演があり、9月2~4日のペーパーセッションでは34の発表があった(ジョイントセッションを行ったCIPEG、CIDOCからの発表を含む)。うち、COMCOLの日本からの発表者は筆者を含め2名であった。その他の国・地域では主に北欧諸国や南アフリカ共和国、また以前にICOM大会が開催されたブラジルなどからの発表があった。聴講者を含む参加人数は、9月2日のCOMCOL単独セッションでは30~40名ほど、そのうち日本人の参加者は5~10名ほどであった。
プレカンファレンスでは、1日目に、奈良国立博物館において松本伸行館長とCOMCOL副委員長のDanielle Kuijten氏(所属:Co-Curator Imagine IC)による基調講演が行われ、夜には奈良国立博物館レストランにおいてウェルカムパーティーが行われた。2日目は根津美術館・白原由起子特別学芸員、奈良国立博物館・野尻忠企画室長の案内で、興福寺国宝館、東大寺大仏殿、東大寺ミュージアム、三月堂を見学した。3日目には白原氏、奈良国立博物館・内藤栄学芸部長の案内で、午前は奈良県郡山市に所在する慈光院を訪問し、住職の法話と喫茶体験、庭園や本堂の拝観を行い、午後は法隆寺を見学した。なおこのプレカンファレンスは、1日目の会場、3日目のチャーターバスの提供、プログラム立案が奈良国立博物館の協力により行われた。
ペーパーセッションでは、①グローバル化した世界におけるコンテンポラリーコレクティング、②違法な取引と起源に問題のあるものについての収集の方策、③コレクションの返還と共有、④時間的、空間的に遠く離れたコレクションへのコミュニティの関わり、⑤伝統、コレクション、マネジメントシステムとデジタルツール、の5つのテーマについて発表が募集され、「カナダ歴史博物館におけるコンテンポラリーコレクティング:理論と実践の分断をつなぐ」、「コレクションポリシーを作る上での包括的方策」、「世界の文化、民族学―博物館とそのコミュニティの関わり―」、「コレクションをオープンデータとして公開する-その挑戦と可能性」などの発表が行われた。
国際委員会に与えられた時間に比して発表者が多く、発表時間は1人につき10分程度に限られ、そのためディスカッションの時間をとることができなかったケースも多かったが、コーヒーブレイクの時間などを利用して活発に議論を交わす様子が見られた。
オフサイトミーティングでは、午前はCIPEGとともに滋賀県のMIHO MUSEUMを訪問し、午後はCOMCOL単独で石山寺、京都国立近代博物館を訪問した。MIHO MUSEUMでは熊倉功夫館長より館の概要をお話しいただき、閉館期間中にもかかわらず、特別に展示室の見学をさせていただいた。京都国立近代美術館では、牧口千夏主任研究員より展覧会の概要をご紹介いただき、展覧会「ドレス・コード?――着る人たちのゲーム」を観覧した。
4日目のオフサイトミーティングは、大型貸切バス1台で名古屋に行き、午前中に名古屋市科学館、午後にトヨタ産業技術記念館を見学した。当初スタッフを含めて40名ほどの参加を予定していたが、当日参加者も加わり補助椅子も使用して46名で出発した。名古屋で合流した人もいて、参加者は50名を超えた。いずれの館でも特別のプログラムを用意していただき、館の概要説明・質疑応答、館内のガイドツアーを実施した。前日の三重県内の大雨により当初予定していた新名神高速道路が通行止めになり、名古屋着が40分ほど遅れたが、名古屋市科学館で急きょプログラムを編成し直していただき、世界一のプラネタリウムにおけるメンテナンスの裏側の解説や体験コーナーの特別体験などを堪能した。午後のトヨタ産業技術記念館では、副館長お二人による英語のガイドツアーがあり、多数の動態展示を実際に動かしながら詳しい解説があり、参加者の大きな関心を呼んだ。これがきっかけになり、理事会から2020年2月にパリで開催されるCIMUSET-CIMCIMの合同シンポジウムでの講演を依頼された。このオフサイトミーティングは、当初京都市内で実施する計画であったが、2018年のCIMUSET年次大会で、京都市以外での実施を理事会から強く要望され、両館の多大なご協力のもと実施できたもので、結果的に参加者の大きな評価を得て、日本に対する関心を高めるものになった。
2)京都大会の評価と課題
委員長代理であるDanielle Kuijten氏より、前回の年次大会の際に伺っていたいくつかの訪問先希望と「日本の人と交流したい」という意向をもとに、日本側でプレカンファレンスとオフサイトミーテイングの企画立案を行った。
COMCOL単独で開催された9月2日のペーパーセッションでは、日本側受け入れ担当者を除き、聴講した日本人参加者が数名しかなかったのは残念ではあったが、少ないながらも新たに日本からの参加者があったのは幸いであった。聴講した日本人の方に話を聞いてみると、同時通訳がついているかどうかで聴講する委員会を選択したとのことで、日本で開催される国際会議における同時通訳の重要性を感じた。
日本からの一般の参加者は少なかったものの、COMCOLメンバーには、協力を行った奈良国立博物館の職員や、京都大会のボランティアと交流を深めていただくことができた。 委員長であったAsa氏のご都合で、ICOM京都大会の5ヶ月ほど前にDanielle Kuijten氏が急遽委員長代理を務めることになり、このころから京都大会の準備が急ピッチで進むこととなった。Kuijten氏からは受入側の協力なしでは今回のプログラムを成功させることはできなかった、とコメントをいただいた。
3)今後の展望
9月4日に開催されたCOMOL総会では、下記のメンバーが理事として選出された。委員長:Danielle Kuijten氏(オランダ、Co-curator Imagine IC)、総務担当理事:Alexandra Bounia氏(カタール、Degree Director for the MA Course in Museum and Gallery Practice in UCL)、財務担当理事:Leen Beyers氏、その他の理事:Riitta Kela (フィンランド) 、Gloriana Amador (コスタリカ) 、Ying-Ying Lai (台湾) 、連携理事(Affiliated Board Member):Alina Gromova (デンマーク)。
COMCOLでは引き続きSharing Collections、Contemporary collecting、Resources、Collections mobility、Newsletterの5つのプロジェクトグループによる活動が行われている(http://network.icom.museum/comcol/who-we-are/project-groups/L/10/ 2019年11月閲覧)。
COMCOLの活動は上記Newsletterグループが発行するニュースレター、Facebook(2019年11月閲覧)で確認できる。次回の年次大会は、ロシア連邦・タタールスタン共和国カザンにおいて2020年9月に開催される。
現在、日本からアクティブに参加している会員は少ないが、関心がある方は委員長までお気軽にお問い合わせいただければ幸いである。