November 6, 2023

ICOMがイスラエル及びパレスチナに関する声明を発表

栗原祐司(ICOM日本委員会副委員長)

 10月25日、ICOMは、10月7日に起こったパレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃と、それに続くイスラエル側の報復等に関し、以下の声明を発表した。


ICOMは、イスラエルとパレスチナの市民に影響を与えている現在の暴力について深い憂慮を表明し、この紛争が過去数週間にわたってもたらした重大な人道的影響について遺憾の意を表明する。ICOMは、暴力により家族、友人、コミュニティを失った人々に心からの哀悼の意を表する。  

ICOMは、文化遺産の保護に対するコミットメントを堅持し、1954年の武力紛争時の文化財保護に関するハーグ条約と2つの議定書を含む国際法および条約を尊重することが、すべての当事者に義務付けられていることを再認識する。  

ICOMはまた、被災地における文化財の密輸と破壊の潜在的な増加に対して警告し、1970年ユネスコ条約や1995年UNIDROIT条約など、文化財の違法な輸出入と譲渡を防止するために取り組む国際的な法的義務を再認識する。  

ICOMは、人命のさらなる損失を防ぎ、コミュニティ人間性に不可欠な文化遺産を保護するために、国際人道法を尊重した即時停戦を期待し、文化遺産の保存と保護を通じて平和、理解、団結の原則へのコミットメントを再確認する。


 この声明の背景の一つに、10月22日にICOMイスラエル国内委員会によって、ICOMがハマスのテロ行為に対し、積極的かつ倫理的な立場をとり、テロ組織として認めることを要求した公式書簡が公表されたことが挙げられる。この書簡には、イスラエル博物館やテルアビブ美術館、ハイファ美術館の館長をはじめ、イスラエルの主要な博物館長が署名しており、「ICOMコミュニティに、ハマスによる無防備な市民の虐殺を非難し、人道と自由主義を支持する大胆な姿勢を宣言するよう心から懇願する。」と述べている。

ICOMの声明ではハマスについて直接言及されていないが、国際NGOとして政治的な発言を控えるのは当然のことと思われる。アメリカでも、ほとんどの美術館がパレスチナとイスラエルの紛争に関してコメントを控えているが、紛争地域で博物館や文化財の破壊が行われれば、まさに国際規約に基づく行動を強く求めていくことになるだろう。

いずれにせよ、「二国家解決」の実現に向けて、早期停戦を祈念したい。このことは、ウクライナはじめ他の紛争地域においても同じである。

(参考)

Statement concerning Israel and Palestine

ICOM Israel מכתב לקהילת איקו”ם בעולם עקב אירועי07.10.23

ICOM Issues Statement on Gaza After Pressure from Israeli Institutions – ARTnews.com

After Pressure From Jewish Groups, ICOM Releases Statement On Israel Attack